日銀、利上げ!!
「大山鳴動して…」
日銀は金融政策決定会合で0.25%の利上げを決定した。市場の事前予想で
は6割が利上げを予想していたが、予想が当たった人も外れた人も、実際に利上げが
行われた場合の備えはそれなりにしていたに違いない。株式市場では日経平均が小幅
続落したものの、TOPIXは昨年4月の高値を終値で10ヵ月半ぶりに更新した。
為替市場では一時、1ドル=119円台まで円高・ドル安が進んだが、すぐに120
円台に戻る展開。マーケットの動きを見る限り、事前の騒ぎが嘘のように何事もなか
ったかのようだ。
総務省の家計調査によると、2006年の単身世帯を除くサラリーマン家計の
平均貯蓄率は27.5%と前年比で2.2%上昇した。1998年以来8年ぶりの上
昇で、将来に備えて財布の紐が固くなっていることが分かる。ちなみに1ヶ月あたりの
消費は2.8%減った一方、貯蓄は8.6%増えた。かなりの上昇だ。このような貯
蓄率の高まりを考えると、日銀の利上げはめぐりめぐって預金金利の上昇という形で
家計に一定の恩恵を及ぼすと考えられる。
ところでフィデリティ投信が19日に発表した「退職後の生活資金に関する意
識調査」(全国20−59歳の男女対象、有効回答数は約2000)によると、退職
後の生活水準について4割強が「現在の水準を維持したい」と答えたものの、「退職
後の
生活資金について考えたことがない」と回答した人の比率も5割弱に達した。さ
らに退職後の最低限の生活収入について6割強が「国が年金等で補償すべき」と答え
、
「自己責任で確保すべき」と答えた人は2割にとどまった。驚くべき他力本願の
実態がうかがえる。ちなみに退職後の生活を見据えて貯蓄目標を立てている人も2割
。退
職後の生活資金確保のため預貯金以外の資産運用を行っている人はわずか13%
だった。
上記の調査を見ると、ほとんどの人が預貯金に頼りきっている実態が明らかだ
。米国では株価の上昇が消費を押し上げる面があるが、日本では預金金利の上昇が消
費を
押し上げる可能性が少なくない。(Sinclair)
「日銀、0.25%の追加利上げ決定」 株式投資
日本銀行は21日、2日目の金融政策決定会合で、昨年7月のゼロ金利解除後初めてとなる追加利上げを決めた。短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を現在の0.25%から0.5%に引き上げる。景気は拡大を続け、焦点となっていた個人消費の回復や物価の安定基調が当面続くと判断した模様だ。9人の政策委員(正副総裁3人と審議委員6人)のうち8人が賛成したが、岩田一政副総裁だけが反対した。総裁・副総裁の間で投票態度が割れたのは新日銀法下で初めて。利上げに否定的な政府・与党から反発が出ることも予想される。
日銀は1月の政策決定会合で、個人消費や物価の先行き不透明感から「強弱さまざまな経済指標が出ており、今後の経済・物価情勢をさらに見極めていく」(福井俊彦総裁)として、追加利上げの見送りを6対3の賛成多数で決めている。
今回の会合では、政策委員の大半が、企業活動の好調さが徐々に個人消費を刺激し、「景気は息の長い拡大が続く」と判断。金融緩和効果が一段と高まるなかで、経済・物価の振幅が将来大きくなるのを抑えるため、追加利上げをすべきだとの認識で一致した模様だ。
利上げの理由としては、今月発表された昨年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報が市場予測を上回る高成長となり、個人消費が前期比プラスに転じたことが大きい。企業の人手不足感が強まりつつあり、賃金の上昇を通じて消費が拡大するとの見通しが政策委員の多数を占めたとみられる。
原油価格の下落で大きな上昇傾向には至っていない消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)も、消費の底堅さから上昇基調が崩れていないと判断した模様だ。国内景気の腰折れにつながる恐れがあるとみてきた米国経済の減速感については、個人消費が堅調で、安定成長に軟着陸する可能性が高いとみている。
決定会合には、政府側から財務省や内閣府の代表者も出席する。直接の議決権はなく、日銀に議決の延期を請求する権利を持つが、政府と日銀の景気認識の違いが表面化するのを避けるため、今回は請求権を行使しなかった模様だ。
ただ、政府・与党内には「利上げは時期尚早」との意見が根強い。「暖冬の影響も加わり、消費回復が遅れている」(大田経財相)など、利上げが景気を下ぶれさせる懸念からだ。
与党は統一地方選や参院選を控え、利上げが地域経済にマイナスに作用すれば安倍政権の支持率にも響きかねないと見ており、今後、日銀への反発を強めそうだ。
事前の市場の予測は「10〜12月期のGDPだけでは決め手に欠ける」として、利上げの織り込み度合いは「短期金利市場の6割程度」とされていた。福井総裁は21日午後に記者会見する予定で、判断についての説明が注目を集めそうだ。
利上げ決定であく抜け、株もドルも買われる
日経平均 17,913.21 (▼25.91)
日経225先物 17,930 (▼30 )
TOPIX 1,787.23 (△ 4.50)
単純平均 484.23 (△ 2.26)
東証二部指数 4,299.77 (△24.48)
日経ジャスダック平均 2,200.46 (▼ 2.18)
東証マザーズ指数 1,117.36 (▼ 4.31)
東証一部
値上がり銘柄数 948銘柄
値下がり銘柄数 615銘柄
変わらず 152銘柄
比較できず 2銘柄
騰落レシオ 109.01% △0.82%
売買高 30億5701万株(概算)
売買代金 3兆4643億7700万円(概算)
時価総額 571兆3581億円(概算)
為替(15時) 120.27円/米ドル
◆市況概況◆
米国市場は堅調となり外国人売買動向(市場筋推計、外資系13社ベース)が
買い越しと伝えられたのですが、日銀の金融政策決定会合を控えて利上げ懸念
もあることから売り先行となりました。それでも寄り付きの売りが一巡したあ
とは底堅い動きとなり、底堅さが確認されると徐々に切り返す動きとなって堅
調な展開になりました。
後場に入っても堅調な地合いが続いたのですが日銀総裁が利上げの提案を行
ったと伝えられると金利敏感銘柄を中心に利食い売りや見切り売りを急ぐ展開
となり、また、為替が円高に振れたことで輸出関連銘柄も一斉に売られ、軟調
となりました。それでもある程度までは利上げも織り込み済みと言うことで下
値をむきになって売り叩く動きも少なく、目先筋の買い方の回転も効いている
状況で底堅い展開となりました。引け際には利上げがほぼ確定ということで出
尽くし感からの買戻しもありましたが日経平均は軟調な引けとなりました。
小型銘柄は鉄鋼株や銀行株など大型銘柄が物色の中心となっていることもあ
って引き続きもたついた展開となり、日経ジャスダック平均、東証マザーズ指
数は軟調となりましたが、二部株指数は堅調となりました。円高を嫌気してハ
イテク銘柄が売られ、利上げを好感するような展開で銀行株が買われたことで
TOPIXは堅調、日経平均は小幅安となりました。
利上げが決定されたことで利上げ懸念が無くなり、あく抜け感から堅調な地
合いとなって来るのではないかと思います。実際に為替などは利上げが決定さ
れると円安に振れ、日経平均も堅調になるなど既に出尽くし感が出ています。
今度は月末でディーラーが動きににくくなり、SQ(特別生産指数)算出や決
算が取りざたされて来るのでしょうが基調は強含みに推移して行くものと思わ
れます。
(マネックス証券 投資情報部長 清水洋介)
◆個別銘柄◆
利上げを好感して銀行株が高く、鉄鋼株は引き続き買い方の回転が効いて高い
ホンダ (7267) 4,620円 ▼60 円 :100株単位
銀行等保有株式取得機構が保有する株式を3755万8400株を売り出すと発表し
たことから、需給悪化への懸念が重しとなり、軟調となりました。
サンポット (3428)
長府製作所(5946)がTOBを実施し完全子会社化すると発表したことから、
前日の終値からTOB価格(510円)が140円高く、短期値幅取り狙いの買いが
膨らみ、ストップ高買い気配で終わりました。
新日鉄 (5401) 805円 △20 円
株主意識調査に乗り出し、全株主に初のアンケートを配布、利益配分を決め
る際の判断材料として活用し、再編機運が高まるなか、個人の安定株主の増加
につなげるのが狙いと報じられ、世界的な業界再編期待を背景に鉄鋼株が買わ
れ、堅調となりました。
ABC マート (2670) 2,975円 △215 円 :100株単位
2007年2月期の業績・配当予想の上方修正をし、外資系証券が投資判断を引
き上げたことから、好感した買いが入り大幅高となりました。
タカラトミー (7867) 809円 ▼36 円 :100株単位
国内玩具市場で携帯型ゲーム機や次世代ゲーム機が人気を集めていることか
ら、一般玩具の人気が劣り、2007年3月期決算を下方修正し、大幅安となりま
した。
三井不 (8801) 3,430円 △60 円
金融政策決定会合で追加利上げを提案したことから、金利負担の増加を懸念
した売りが出てもたつく場面もありましたが、結局堅調となりました。